小説『西の魔女が死んだ』のあらすじと感想

自然と愛を教えてくれる『西の魔女が死んだ』

小説『西の魔女が死んだ』は映画化もされたので知っている方は多いと思います。『西の魔女が死んだ』は私が好きな小説の一つです。
※梨木香歩原作「西の魔女が死んだ」(2008年)

身近なところに魔法はあるのです

この本に出合ったのは私が高校生のころです。当時はまだそれほど話題にはなっていなかったと思うのですが、たまたま高校の図書室で見かけてタイトルが気になったので読んでみました。
私は魔女に興味があって「魔女」とタイトルにつくものは読んでみたくなるのです。
『魔女の宅急便』も全巻読みました、もちろん。

物語の好きなポイント

さて、西の魔女が死んだに登場するのは、魔法を使う魔女ではありません。でも、魔女のような存在です。
主人公が眠れない場面があるのですが、なかなか眠れない主人公におばあちゃん(魔女)がたまねぎを持ってきて枕元につるします。たまねぎの香りが睡眠を促すというのです。
シーツを洗った後にはラベンダー畑の上にシーツを広げて干します。こうすることでシーツにラベンダーの香りがつくのです。ラベンダーの香りにはリラックス作用があり、睡眠へと促してくれます。

魔法というと変身をしたり魔法の杖で何かを出したりといったことを想像しますが、おばあちゃんが行っている魔法は誰もができるようなちょっとしたことです。
こういったシンプルな生活の知恵みたいなものがところどころにちりばめられているところが好きです。

この小説に登場する誰もができるちょっとした魔法は、誰もができてもやっている人は少ないと思います。こういったちょっとした工夫があれば、薬などに頼らなくてもいいのになと思います。
でも、実際には多くの現代人がすぐに西洋薬に頼っていますけどね。

自然の力はすごい

冬至にはお風呂にゆずを入れますが、ゆず湯に入ると体が温まります。体が冷えたときには生姜湯を飲みます。風邪を引いたときにはネギを首に巻いたり食べたりします。こうやって自然の力を利用しているのです。

本当は身近なところに魔法があふれているのかもしれません。

でも、現代人は忙しさや電子機器に紛らわされてしまい魔法を忘れているのでしょう。
魔法を使えば今の生活よりもちょっとだけ気持ちに余裕を持てると思うし、ちょっとだけでも健康的になれると思います。そういった大切なことを思い出させてくれる小説です。

おばあちゃんの優しさが感じられる小説

『西の魔女が死んだ』はおばちゃんの優しさも感じられる小説です。
主人公の女の子がおばあちゃんに「おばあちゃん大好き」というと、おばあちゃんは「アイノウ」と返事をします。「アイノウ」と英語なのはおばあちゃんがヨーロッパ系の人だからです。これは決まったやり取りで、この二人のやり取りが好きです。

「おばあちゃん大好き」って好きでもなかなか言えませんよね。
でも、ヨーロッパやアメリカでは自然と自分の気持ちを伝えているのだそうです。おばあちゃんがヨーロッパ系の人なので、主人公も自然と気持ちを伝えられるのでしょう。

「おばあちゃん大好き」という言葉に対して、おばあちゃんは「アイノウ」と返事をする。
この決まったやり取りは二人の秘密のやりとり、二人の絆の深さを表しているように思います。このような深いつながりっていいなと思います。

人との絆や愛情の大切さを改めて感じられる

現代社会で深いつながりを持つことができるでしょうか。
家族といっても食事はいつも別々でただ一緒に暮らしているだけで心のつながりがなかったり、児童虐待が行われていたり、絆が失われていると思います。絆が失われることで愛が失われてはいるのではないでしょうか。

他にも優しさを感じられるシーンがあります。
あるとき、おばあちゃんが主人公のためにエプロンを作ります。主人公のお母さんが以前着ていた服を新調し直して作り始めるのです。
自分のために何かを作ってくれるのは、私だったらうれしいです。それが新しい布でなくてもいいのです。
「自分のため」というところが大切です。

今だったら新しいエプロンなんて簡単に手に入るけれど、自分のために作ってくれるのです。
世界にたった一つしかない自分だけのもの。
おばあちゃんが愛情込めて作ってくれたもの。
このようなものならずっと大切に使いたいです。こういったシーンからもおばあちゃんの優しさを感じられます。

『西の魔女が死んだ』を読むと主人公とおばあちゃんのやり取りから温かいものを感じます。優しい気持ちにしてくれるのです。
心がギスギスしてしまっている方も、西の魔女が死んだの世界に浸ることで大切なものを思い出したり、優しい気持ちになれると思いますよ。