子供を産むという事「透明なゆりかご」のリアリズム

透明なゆりかごが伝えたい事

産婦人科で研修生として働く少女の目線で産婦人科の実態を描いた漫画「透明なゆりかご」は作家である沖田×華さんの実録のようになっており、リアリティーある産婦人科の実態を知ることができます。

ぜひ、男女は問わず、特に若い人、子供がまだいない人に読んで目を通してもらいたい本なのです。

透明なゆりかごの魅力とあらすじ

イラストは一見するとコメディー漫画のような感じなので、ユーモアが多いような漫画なのかと思いきや、イラストに見合わないよなストーリーとなっているため、毎話で泣かされたり、怒りを覚えたり自分の様々な感情に驚かされてしまいます。

単なる感動話で終わらないリアリズム

透明のゆりかごを描いた作家の沖田×華さんは、学習障害を抱えており、アスペルガーとも診断されながら、看護師を目指していたという過去があり、独特の表現で説教じみた内容ではなく、さらりと命について触れているのですが、そのさりげなさがより感動的であり、命について考えさせられます。

冒頭からアウスという手術に立ち会わされ、そのアウスが中絶手術のことで、沖田×華さんが働かれていた当時の本当の死亡要因一位は中絶であると聞かされてしまい、ショックを受けてしまいます。

沖田×華さんが産婦人科で働きだしてすぐにその事実を教えられたことがショックだったように、見ている人にもショックを与えられるものです。

主人公の女の子が大きなショックを受けるというわけではなく、たんたんと瓶に詰めていき、外の景色を見せてあげて話しかけてあげるというのが、命の儚さに涙を流したりするというような展開よりもとてもリアルです。

産婦人科での様々な人間ドラマ

中絶手術が行われたベッドで出産を迎える、産まれてくる命と亡くなる命について、序盤から訴えかけてくるようで、イラストを見て安易に見ることが出来る漫画だと油断していると、胸が熱くなるような気持ちになります。

産婦人科を舞台にした漫画というと、可愛い赤ちゃんが出てきてほんわかとしているようなイメージがあるのですが、透明なゆりかごという漫画は、赤ちゃんのかわいらしさというよりも、産婦人科に訪れる様々な人々のドラマにも踏み込んだ、病院ものの漫画のなかでも、リアリティーを追求しているという最高傑作です。

子供がほしい人、特に子供を産まない立場の男の人は必ず読んでおくべき内容の漫画だと思います。きっと女性に感謝すること間違いありません。

透明なゆりかごから学ぶこと

透明なゆりかごという漫画は、産婦人科に訪れる様々な人々のドラマにも着目をされています。

時には父親がいないような女性が訪れたり、不倫相手の子供を身ごもってしまい、男から捨てられてしまい、産む前までは子供なんて欲しくないと思っていた女性が産後に母性を抱くことになったと思ったら、後日子供を授乳中に誤って押し潰して亡くならせる事故を起こしてしまったりというような。

赤ちゃんを産むという事

産むだけでなく、その前後のストーリーもしっかりと描かれており、赤ちゃんを産むというのはどのようなことなのか、生きるとはどのようなことなのかを考えずにはいられません。

そのなかでもこれから子供を産みたいと考えている人、妊娠のことを考えずに、避妊もしていないような全ての人に見てもらいたいのが、出産後に亡くなった女性が出てくる回です。

産後に亡くなるというのは昔の話だと思われている方も多いのですが、今でも出産中に亡くなる人は多く、特に持病を持っている方は注意が必要であると言われています。

透明なゆりかごで取り上げられたのは、何の問題もなく、健康状態も母子共に問題なく、誰もが赤ちゃんを産んで幸せな家族となるのだと考えているような、いわゆる出産後の母体死亡ノーマークの女性です。

健康体で赤ちゃんを産み終わり、ホッとしているときに大量の出血が起こり、大病院へと送られるものの、手の施しようがなく、あっという間に亡くなってしまうという内容でした。

漫画には描かれていませんが、作者の沖田×華さんは、患者さんを救急車に乗せたときにすでに意識が朦朧として、目も口も半開きのような状態で、旦那さんには見せることが出来なかったと語っています。

健康で問題などなかった女性が出産後に亡くなるのは、以前よりも少なくなっているものの、ゼロではないのです。

出産は命がけという事

出産を甘く見ている方がいます。
妊婦に対してマタニティハラスメントをしたり、自分自身が子供がいるくらいだと軽く見ている人もいますが、この漫画を見ると、出産が命がけであることを思い出すのではないでしょうか。

子供を産むということは命がけの行為であることを多くの人に知らしめる漫画であり、是非とも教育の一貫としてこの漫画を取り入れてほしいと切に願わずにはいられません。