カブトムシの飼育のイロハ
盛夏も過ぎ少しづつ空も秋めいてくると、ケージの中で元気に動き回っていたカブトムシも1匹、また1匹と息を引き取り始め、少しづつ寂しくなってゆくもの。
次の世代に命を繋げたいなら早目に、かつ確実に交尾・産卵させ、元気な幼虫を確保したいところです。
ストレス無く産卵させる事が大切
カブトムシの繁殖、特に交尾から産卵にかけての世話はそう難しい事では無く、オスメスペアで飼育していれば秋口には自然と卵や幼虫が得られるもの。ただ効率良く更に多くの卵や幼虫を確保するには、それなりの工夫が必要となってきます。
大事なのは、いかにしてメスをストレス無く産卵させられる環境を整えるかという事。狭いケージに少量のマットを敷いただけでは中々メスに産卵のスイッチが入らず、無駄に時間を重ねた割には殆ど卵や幼虫が得られない、という結果に終わりかねません。
最も手軽でベストなのは、容量40リッター以上・高さ30センチ程度のコンテナケースを用意し、マットを厚く敷き詰めて産卵用の飼育ケースに仕上げ、そこに交尾済みのメスを放すという方法。これなら広々としたスペース内でメスも一切ストレスを感じず、産卵に励む事が出来るでしょう。
カブトムシのメスは産卵の為相当深くまで潜っていきます。ですからコンテナケースの中に敷くマットの厚さは最低でも20センチを確保したいところですが、ここで大切なのがマットの固さ。
カブトムシのメスはある程度マットが固くないと違和感を感じてしまう様で、深く潜ってくれない上、産卵の為に周囲のマットを固める関係上、マットが柔らかいと体力の消耗が激しくなり、産卵数が減ったり早期に死んでしまったりといったデメリットが出てきます。
適度な湿り気を与えたマットをケース内に敷き詰めた後、両手でギュッと上から押し固めてあげれば、放たれたメスも素直にマットに深く潜り、産卵に励んでくれます。
なおマットの湿り気は、手で一掴みしてギュッと握り、手を開けばマットが塊状になる程度が目安。マットがぐちゃぐちゃになってしまう様では水分過多ですし、塊にさえならずサラッと崩れてしまう様では水分不足。上手く調整したいところです。
上記の容量の中型コンテナケースなら、1ケース当たりメス2匹がベスト。これ以上メスの数が増えれば、産卵時に他のメスが産んだ卵を潰してしまう等、産卵効率がぐんと落ちてしまいます。
幼虫の確認最初のタイミング
産卵中のメスは想像以上の大食漢。ケース内に設置した昆虫ゼリー数個を一晩で平らげたと思ったら、次の日は昼夜ぶっ通しでマットの奥底まで潜り産卵したまま出てこない、というケースもしばしば。
早朝ケースを開けマット表面にメスの姿が無かったとしても、空の昆虫ゼリーがあればその都度新鮮なものに交換し、餌を絶やさない様にする事が大事です。昆虫にとって生殖活動はまさに命がけの作業。消費するパワーも大変なものですから、豊富な餌でサポートしてあげたいものです。
カブトムシのメスは一旦スイッチが入ると死ぬまで産卵を続ける習性があります。マットに潜ったまま数日間全く姿を見せないと思ったら、ある日突然マットの表面にひっくり返り既に死んでいる姿を発見する事も。
おそらく全てのパワーを産卵に捧げ力尽きたに違い無く、亡骸を取り出し弔い、確実にマットの中に残された卵や幼虫を育て上げたいところです。
産卵があらかた終わりメスも全て息を引き取ってしまったら、メスのマット上での活動スペースを綺麗に整理し、気温・湿度の安定した日陰にケースを置き静かに卵が孵化するのを待ちます。
技術に長けたベテランなら直接マットの中から採卵し、卵の数を数えたり孵化専用のマットに移したりといったテクニックも可能ですが、初心者で自信が無ければなるべくそのままにし、孵化した幼虫がある程度大きくなってからチェックするのがベターでしょう。
卵が孵化し幼虫がある程度大きくなってくれば、コンテナケースの側面からマット内を動き回る小さな幼虫の姿が確認出来る様になります。
どれだけの幼虫が孵化し成長したのかをチェックするなら年末、食べられ減ったマットを交換する際同時に行うのがベスト。あまりに急な成長ぶりや数にビックリするケースもあるかも知れません。
40リッターのコンテナケースなら飼育出来る3令幼虫の数も10匹が限界ですから、それ以上の数が得られた場合、新たにコンテナケースを用意したり、観察専門のペットボトルを用意したりして、適宜移すと良いでしょう。
新たな飼育ケースを用意する場合、中に敷くマットを100パーセント新しくするのは避け、元居たケースのマットを糞と共に少し混ぜ、幼虫に違和感を覚えさせない様にするのがベストです。